勝手ながら2025年12月21日より2026年1月18日までの間 休廊とさせていただきます。
2026年は1月19日より「小松 純 展」を開催致します。

小松 純 展 NONF.C.,2026
テキスト 中井 康之


2026.1.19-1.31 (1.25close)
星光画廊



往還する眼差し

中井康之


 小松純の新作《内なる眼差しを外側へ》は、孔を穿った陶製の球体(H750×W900×D900mm)、ヒトガタの立体、棒状の要素、直径約180mmの丸形陶板81枚から成るインスタレーションである。
 球体の無数の孔は、内と外の境界を「隔て」ではなく「往還」として立ち上げる装置であり、覗き込む視線に内部の暗さや厚み、こもる気配を想像させると同時に、外光や周囲の環境を取り込み、内側を外部の条件に応じて刻々と変化させる。
 床面に配置されたヒトガタは観者の身体を代行し、球体と観者が同じ場に身を置き、互いに向き合う関係を可視化する。他方、棒状の要素は支持体であると同時に、転がすことで配置を崩し、関係性そのものを攪乱し得る不安定な軸として潜在している。
 壁面の円形をした陶板である「泥盤」には、日々の印象を記録するドローイングが施されている。そのうち12枚にはアナログ時計キットが仕込まれており、針の微かな運動と駆動音が、過去に描かれた線と現在進行中の時間を重ね合わせている。

 ここでは、内/外の往還は空間だけでなく、過去と現在、静止と運動、記憶と現在感覚のあいだの往復としても現れている。タイトルが示す「内なる眼差し」とは、内面の確信を一方的に外へ投影することではなく、外部の声や温度、光、時間の変化に向けて内側を開き、そのつど揺れ動く関係を引き受ける態度を指す。以前に述べたように、山極寿一がインゴルドを引きつつ警告した「関係を読む力」の誤作動は、関係を固定し、他者や自然を対象化することにおいて生起する。そのことを踏まえるなら、本作は、球体・ヒトガタ・棒状の要素と陶板群をゆるやかに呼応させることで、関係を可塑的で開いたものとして再び立ち上げる試みといえる。

 小松の「新しい全体性」とは、異質な要素を一つに回収して閉じてしまう統一ではなく、互いに浸透しつつも決して一つになりきらない複数性の場としての全体である。床に置かれた陶の球体は重力と観者の立ち位置を可視化し、壁面の時計は別種の座標として時間の流れを示す。内と外、物質と時間、作品と観者の身体がたえず交感しながら編み上げるこの開かれた全体性こそ、「内なる眼差しを外側へ」と名づけられた小松の試みが、いま私たちに差し出している世界そのものなのである。

なかい やすゆき(美術評論家・京都芸術大学大学院客員教授)



□ 略歴

1964

広島県生まれ

1987

多摩美術大学絵画科卒業

 

個展

1991

ギャラリー白

(大阪)

 

ギャラリー+1

(東京)

1992

ギャラリーNWハウス

(東京)

ギャラリー白

(大阪)

1993

ギャラリー陶園

(滋賀)

ギャラリー白

(大阪)

1994

ギャラリー陶園

(滋賀)

ギャラリーキューブ

(滋賀)

ギャラリー白

(大阪)

マスダスタジオ

(東京)

ギャラリー白

(大阪)

 

ギャラリー陶園

(滋賀)

ART SPACE JONAISAKA

(栃木)

1996

ギャラリーMOCA

(愛知)

ART SPACE JONAISAKA

(栃木)

1997

ギャラリーMOCA

(愛知)

1998

ギャラリーMOCA

(愛知)

1999

ギャラリーMOCA

(愛知)

2000

ギャラリー白

(大阪)

ギャラリーMOCA

(愛知)

2001

ギャラリー小原

(滋賀)

 

ギャラリーたつき

(東京)

 

ギャラリーエスプリヌーヴォー

(岡山)

2002

ギャラリー白

(大阪)

2003

ギャラリー小原

(滋賀)

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)

2004

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)

2005

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)

2006

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)

2007

ギャラリー小原

(滋賀)

ギャラリー白

(大阪)

2008

ギャラリー白

(大阪)

2009

ギャラリー小原

(滋賀)

ギャラリー白

(大阪)

2010

ギャラリー白

(大阪)

2011

何展

(gallery KOHARA:滋賀)

 

ギャラリー白

(大阪)

2012

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)

2013

ギャラリー白

(大阪)

2014

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)

2015

ギャラリー白

(大阪)

2016

ギャラリー白

(大阪)

2017

何展

(gallery KOHARA:滋賀)

ギャラリー白kuro

(大阪)

2018

ギャラリー白kuro

(大阪)

2019

ギャラリー白kuro

(大阪)

2020

ギャラリー白kuro

(大阪)

2021

ギャラリー白kuro

(大阪)

2022

ギャラリー白kuro

(大阪)

2023

ギャラリー白kuro

(大阪)

2024

ギャラリー白kuro

(大阪)

2025

何展

(gallery KOHARA:滋賀)

2026

星光画廊

(大阪)


グループ展

1986

故・事・通・交

(ギャラリーパレルゴン:東京)

現象の帰納展

(横浜市民ギャラリー:神奈川)

1988

Modern Art Sale 展

(京二画廊:東京)

CLAY DANCE

(O美術館:東京)

セラミック・マーケット

(ギャラリーQ+1:東京)

セラミックアネックスシガラキ'88 招待出品

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー/信楽伝統産業会館:滋賀)

1988

Modern Art Sale 展

(京二画廊:東京)

セラミック・マーケット

(ギャラリーQ+1:東京)

Accent of the Daichi

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー:滋賀)

Individual Works

(なびす画廊:東京)

clay art '88

(佐賀町エキジビットスペース:東京)

1989

THE VIEW

(ハートランド・ギャラリー:東京)

セラミックアネックスシガラキ'89

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー/信楽伝統産業会館:滋賀)

炎の中からのメッセージ

(信楽伝統産業会館:滋賀)

 

光のオブジェ展

(京二画廊:東京)

1990

クレイ・コネクション

(目黒美術館:東京)

国際工芸ビエンナーレ 招待出品

(バロリス市:フランス)

セラミックアネックスシガラキ'90

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー/信楽伝統産業会館:滋賀)

1991

土・メッセージIN 美濃

(岐阜)

セラミックアネックスシガラキ'91

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー/信楽伝統産業会館:滋賀)

CERAMIC SCULPTURE '91- 空間考

 

(セラミックアートギャラリー:東京)

1992

Three men's works clay

(ギャラリーすずき:京都)

CERAMIC SCULPTURE '92- 空間考

 

(セラミックアートギャラリー:東京)

1992

セラミックアネックスシガラキ'92

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー/信楽伝統産業会館:滋賀)

 

野外制作'92

(滋賀県立陶芸の森:滋賀)

 

陶-開かれた大地

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1993

新広島国際空港ホテル壁面にポイントレリーフ制作

(広島)

 

ウエスタン・キャロライナ・ユニバーシティーにて訪問制作

 

(ノースキャロライナ州:アメリカ)

ウエスト・ミンスター・カレッジにて滞在制作

 

(ペンシルベニア州:アメリカ)

CERAMIC SCULPTURE '92- 空間考

 

(セラミックアートギャラリー:東京)

セラミックアネックスシガラキ'93

 

(滋賀県立近代美術館ギャラリー/信楽伝統産業会館:滋賀)

CERAMIC SCULPTURE '93 - 空間交

 

(セラミックアートギャラリー:東京)

1994

近作展17-クレイワークの4人展

(国立国際美術館:大阪)

1995

1995 陶-我の風景

(大阪府立現代美術センター:大阪)

土・メッセージIN 美濃

(岐阜)

2000

I.W.CONCU.International Ceramic Workshop 2000 参加

 

(フロリダ州:アメリカ)

2001

陶芸展<壁>

(ギャラリー白:大阪)

2003

Ceramic Site

(ギャラリー白:大阪)

2004

Ceramic Site 2004

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2005

Ceramic Site 2005

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2006

陶芸の現在、そして未来へ。 Ceramic Now +

 

(兵庫県陶芸美術館:兵庫)

Ceramic Site 2006

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2007

Ceramic Site 2007

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

倉科勇三×小松純 - 素材と身体

(ギャラリー白:大阪)

2008

陶で彩る

(東広島市立美術館:広島)

Ceramic Site 2008

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

現代陶芸作家による Ceramic site 2008

 

(京阪百貨店守口店美術画廊:大阪)

2009

Ceramic Site 2009

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2010

Ceramic Site 2010

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2011

Ceramic Site 2011

(ギャラリー白,ギャラリー白3:大阪)

2012

Ceramic Site 2012

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

Ceramic Site 2012 〜陶芸の可能性〜

 

(京阪百貨店守口店 京阪ギャラリー:大阪)

2013

Ceramic Site 2013

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2014

Ceramic Site 2014

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2015

Ceramic Site 2015

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2016

Ceramic Site 2016

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

 

見上げてみよう

(ギャラリーPIAS:大阪)

2017

美人画

(ギャラリー白:大阪)

Ceramic Site 2017

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2018

Ceramic Site 2018

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2019

Ceramic Site 2019

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2021

Ceramic Site 2021

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2022

Ceramic Site 2022

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2023

Ceramic Site 2023

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

 

Ceramic Site 2024

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)


受賞

1990

「やきものによる公共空間への提言」コンペティション 銀賞

2011

滋賀県文化奨励賞